時代家具とは

日本で家具が一般庶民に広まり始めたのは、江戸時代になってからの話です。かつて家具は、主に貴族、武家や商家が所有していました。庶民は大邸宅に住んでいたわけでなく、多くの住まいは家具をいくつも置けるほど広くなかったためです。

戦国時代頃には武家や商家から家具の需要が高まり、木製の箪笥や座卓をつくる職人が増えたと考えられています。さらに江戸時代の後期になると庶民にも普及し、家具専門の職人が登場しました。

その当時のものであったり、デザインをそのまま受け継いでいるものが「時代家具」と呼ばれています。

時代家具で思い浮かぶ代表的なもの、もしくは今もなお人気のものとしては

  • 和箪笥(わだんす)
  • 茶箪笥(ちゃだんす)
  • 水屋(みずや)
  • 薬箪笥(くすりだんす) 
  • 階段箪笥(かいだんだんす)

などがあります。それぞれ、名前の由来であったり、特徴があったりします。 その他にも時代家具と呼ばれるものは豊富にあります。

時代家具の種類

江戸時代の庶民の間で広まった家具を基準にすると、

時代家具は主に「座具、卓、収納具」の3種類になります。

座具

座具には、座椅子や脇息(きょうそく)があります。

座椅子(ざいす)

座椅子は脚がなく、畳や床にすわってよりかかるように作られているもので、基本的に座布団などを置く座面と背もたれで構成されています。

脇息(きょうそく)

脇息は肘掛けを指し、実際には肘を置くだけでなく背もたれとしても使われました。
わきに置くことで体をあずけ休息をとることができます。
木製や竹製のものがあり、長方形だけではなく湾曲させることによって、使い勝手を向上させた物、女性用の引出し付きの箱型など様々なものが存在しています

卓には、座卓・花台・文机・書見台・長火鉢・膳などがあります。

座卓(ざたく)

和室の食卓として、来客時には接待用として利用されます。丸形や楕円のものもあり、茶の間で使う簡単な形式で折り畳みのできるちゃぶ台も、座卓のなかに含まれます。

花台(はなだい)

水盆や花を活けた花瓶をこの台の上に飾ります。
床の間に置く背の低いものや、床に置く背の高いものまで、種類やデザインも豊富です。

文机(ふみづくえ)

座位で書物を読んだり、書き物を行なうために使用する机。

学問が主に寺で行われていた事から、経机と共通する形になっています。

書見台(しょけんだい)

座位の状態で書物や楽譜を読む為に使用します。

現在では、書物をおくものを書見台、邦楽で使用するものを見台と呼び分けている場合が多いです。

長火鉢(ながひばち)

江戸火鉢と関西火鉢の2種類が存在し、木炭を燃料とする暖房用具の一種です。
長火鉢は、普通ケヤキ、ナラ、セン、クワなどでつくる指物(さしもの)で、江戸時代の寛政(かんせい)年間(1789~1801)ごろから急速に普及し、農山漁村の生活における「いろり」のように、長火鉢は都市の家庭生活の中心として、昭和20年代まで、茶の間や居間になくてはならない存在でした。

膳(ぜん)

折敷(おしき)から発達し猫足、蝶足などの足付きのものが作られました。
江戸末期から足なしの会席膳が流行し、一般家庭でも使用されるようになりました。
江戸時代に借家住まいの庶民は、箱膳(はこぜん)を使用しており、この中に個人の食器や箸を収納していました。

収納具

収納具には、和箪笥・茶箪笥・水屋・船箪笥・薬箪笥・階段箪笥などがあります

和箪笥(わだんす)

和箪笥は、日本古来からの家具の名称で、引きだしを何段も重ねた収納家具を指します。 サイズは高さが180cm、奥行が50cmほどのものが一般的です。多くの和箪笥は、引きだしが桐で作られており、ここに和服を収納します。

茶箪笥(ちゃだんす)

 茶箪笥は、茶器や食器を収納する為の家具で、菓子器を入れたりする事もあります。
もともとは、茶道で使う為の茶器を納めるための棚でした。
様々な引出しを組み合わせて作られているのが特徴で、袋棚や違棚、引出しなどを備えている為、それぞれの使用用途に合わせて入れる場所を選べます。

水屋箪笥(みずやたんす)

 「水屋」が水を扱う台所など指しており、そこで使われる箪笥が「水屋箪笥」で江戸時代の食器棚のことになります。
いくつかの引出しや戸棚がついているのが特徴です。
昔は食器や調理道具等、台所用具一式を「水屋箪笥」一つに収納していました。

船箪笥(ふなだんす)

船箪笥は、江戸中期から明治末期にかけて日本海を往来した「北前船」に積まれ、貨幣、帳面、船往来手形、印鑑などの貴重品を入れる精巧で緻密な箪笥の事です。
サイズは船内を携行できるぐらいの小型で、材料は外側が欅材に鉄金具を装飾して堅牢に、内部は高湿度によって膨張する特性のある桐材を使い漏水を防ぎます。
その様式は用途別に、現金や重要書類を入れる金庫としての「懸硯(かけすずり)」と「帳箱(ちょうばこ)」、衣裳を入れる「半櫃(はんがい)」があります。

薬箪笥(くすりだんす) 

薬箪笥は漢方を分類・保管するための小さい抽斗(ひきだし)が沢山ある箪笥。
中国から伝わった箪笥で、湿気を嫌う薬の保管に適した桐材が主に使われています。百味箪笥や百目箪笥と呼ばれる場合もあります。

階段箪笥(かいだんだんす)

階段箪笥は、2階に上がる階段の下のスペースを有効に活用するため、抽斗(ひきだし)や戸棚を取り付けた箪笥です。
別名では、箱階段、箱箪笥とも呼ばれています。
江戸時代初期に生まれた階段箪笥は、関西の町屋を中心に広まりました。

日本の時代家具の魅力

美しいデザイン

日本の時代家具には、緻密な技術と美的感覚に基づいたデザインが特徴的です。木目や質感を活かしたシンプルで美しいデザインが多く、和の美意識が反映されています。

高い機能性

古くからの職人技術を活かした家具は、使用する場面や目的に合わせて様々な機能を持っています。例えば、折り畳み式の家具や収納力の高い家具座椅子などがあり、多様なニーズに対応しています。

長寿命性

丁寧に造られた家具は長持ちします。又、素材にこだわり手入れをすれば長年にわたり美しい状態を保つ事が出来ます。その為、長く使い続けることで愛着がわくことも多いです。

文化的背景/歴史性

日本の時代家具には、時代の背景や文化を反映した歴史的な価値があります。
例えば、江戸時代の「軽量/高機能/装飾的」な家具は当時の人々の生活様式や価値観が反映されたものであり、その時代の文化や歴史を知る上でも貴重な存在です。

手仕事の美しさ

日本の時代家具は、多くが職人によって手作りされています。その為、1つ1つに手仕事の美しさが感じられ、職人の技術や工夫が垣間見えます。
そういった点から、手仕事の温かみが伝わる家具としても魅力があります。

以上、日本の時代家具の魅力を挙げてみましたが日本の家具だけでなく海外のアンティーク/ヴィンテージの家具にもそれぞれ、新しいデザインには出せない個性的な魅力があり、これから家を建てようと考えている方はお部屋の雰囲気に合せどのような時代家具をそろえるのかを考えるのも楽しみの一つになるかもしれません。